近年爆発的な人気を博しているラグジュアリースポーツウォッチ、通称ラグスポウォッチ。しかし、実際のところ、「ラグスポ」というジャンルは、具体的にはどんな腕時計を指すのかイマイチしっくりこないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ラグスポウォッチに区分けされる(であろう)時計をベースに、その要素を徹底分解してみました。
ラグジュアリースポーツウォッチの購入を検討中の方、購入とまではいかないけれど気になっている方、ぜひご覧ください。

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ラグスポとは?
まずは改めてラグスポとは何か、というところから始めましょう。ラグスポとは先述した通り、ラグジュアリースポーツの略称です。
すなわち、豪華かつスポーツテイストのある風合いといったところでしょうか。腕時計界隈ではこういったスタイルの腕時計を単にラグスポ、ラグスポウォッチやラグスポ時計と呼んだりします。

ラグスポ要素を大分解!
「ラグスポウォッチ」これだけ腕時計業界でブームとなっていながらも、明確な定義がないラグスポ。
今回は筆者の個人的な見解も交えつつ、一体どういった要素が腕時計をラグスポたらしめるのか、について考えてみたいと思います。
ラグジュアリー要素を分解
まずはラグジュアリーという要素をさらに分解して、細かく考察してみましょう。
ブランド価値
腕時計の世界ではブランドのもつ付加価値が大きな比重を占める世界でもあります。特に歴史が古い老舗が名を連ねる高級時計界においては、脈々とその長い歴史を生き抜きブランド価値を向上させてきたハイエンドな高級機はラグスポと区分されるにふさわしいといえるでしょう。
ラグスポの祖ともいえるオーデマ・ピゲやトップ・オブ・トップのパテック フィリップのノーチラスなどは、崇高なブランド価値を併せ持ったラグスポであることを誰もが疑わないでしょう。
すなわち、「ラグスポ」という要素におけるラグジュアリーには、ハイクラスのブランドであること、という意味合いも含まれていると考えます。加えて、ハイクラスの腕時計ブランドにおいては、やはり類まれなる技術力を併せ持っていることがほとんどです。
その技術力の見せ所のひとつが複雑機構と言えるでしょう。最近では人気のラグスポウォッチ(プレーンタイプ)にトゥールビヨンをはじめとした複雑機構を搭載したモデルも見かけるようになりました。
ー想起されるコレクションー
・パテック フィリップ ノーチラス(世界三大時計)
・オーデマ ピゲ ロイヤルオーク(世界三大時計)
・ヴァシュロン コンスタンタン オーヴァーシーズ(世界三大時計)
・ランゲ&ゾーネ オデュッセウス(世界五大時計)
・ロレックス スカイドゥエラー(レガッタクロノグラフの搭載)

使用素材
ラグスポウォッチといえば、超高級ブランドが作るステンレス素材を使用し、機能性に富んだ腕時計、と説明されることもしばしば。
もちろんこれには私個人としても同意です。とはいえ単純に(というか当然のことながら?)ゴールドやホワイトゴールドといった貴金属を使用している腕時計もまた、ラグジュアリーな要素を強めるのに一役買っています。
近年よりラグスポの解釈の範囲は拡大しており、最近では、ステンレス素材をベースとしながらも、インデックスやベゼルにダイヤモンドを散りばめたり、フォルム自体は大胆にスポーツデザインに寄せながらも、ゴールド素材を織り交ぜラグジュアリーに仕上げたモデルも目立ちます。
これらについても、ラグスポにおけるもう一方の要素であるスポーツテイストを備えていれば尚のこと、十分にラグスポウォッチと言えるに足ることでしょう。
各メーカーも、人気のラグスポ市場にこれまでにない形(ステンレス素材にこだわらない)で参入しようと考えているのではないでしょうか。
ー想起されるコレクションー
・ピアジェ ポロ(ダイヤインデックス)
・ロレックス ヨットマスター(ロレジウム)
価格
ラグスポを語るうえで高級であるという意味合いを完全に外すことはできませんが、現代においてはモーリスラクロアのアイコンにみられるように、非常にリーズナブルでありながらもラグスポウォッチとして確かな地位を確立しているコレクションも見られます。
したがってラグスポの構成する要素として価格は確かに存在しながらも、その意味合いはやや薄れてきていると言ってもいいかもしれません。
ー想起されるコレクションー
・パテック フィリップ ノーチラス(超高額帯)
・モーリス・ラクロア アイコン(リーズナブル)
スポーツ要素を分解
ラグスポのスポーツ部分を「=機能的な」と捉えるかどうかを迷いましたが、今回はスポーツ的要素をもう少し大枠のコンセプト的な観点から考察してみたいと思います。
パイロット
ラグスポといったジャンルに限らず人気のパイロットウォッチ。
航空機やコックピットを想わせる武骨でミリタリーチックなニュアンスは男心をくすぐるものです。操作性に優れたクロノグラフを搭載していることも多く、やはり人気の高いジャンルと言えるでしょう。
ー想起されるコレクションー
・ブレゲ アエロナバル
・ベル&ロス BR05
・カルティエ サントス

ダイバーズ
ダイバーズウォッチの特徴としては、一定以上の防水性能を備えている、回転ベゼルを装備しているなどが挙げられるでしょう。
しかし、実際の着用シーンでそういった機能をフル活用することは少ないと考えられ、このあたりの要素も、機能性とは言いつつも、あくまで滲み出る世界観を愉しむといったところでしょう。
そのため、個人的に、とくにラグスポウォッチ領域においてはダイバーズウォッチの機能上の定義からは外れるものもダイバーズ的要素を持つ、と認識しています。
ー想起されるコレクションー
・ロレックス ヨットマスター
・ロレックス サブマリーナー(コンビモデルなど)
・ブレゲ マリーン
・カルティエ パシャ
・カルティエ カリブル

第3の要素
最後に、腕時計をラグスポと呼ばせる第3の要素について考えてみたいと思います。
ラグジュアリー、だとかスポーティーといったワードからはなかなか想起されないこれらの要素こそが、よりその腕時計をラグスポたるものにさせると同時に、他ジャンルとの境界線を曖昧にさえしうるものだと思います。
ビス留め
特にラグジュアリーでもスポーティーでもない要素、だけれどもラグスポらしいわかりやすい要素の一つとしてビス留めのデザインが挙げられるでしょう。
ー想起されるコレクションー
・ウブロ クラシック・フュージョン
・カルティエ サントス
・ショパール アルパインイーグル
・IWC インヂュニア
多角形フォルム
こちらもラグジュアリースポーツウォッチにとって大きな要素です。正確に表現すると、角がないデザインも多分に存在し、近年も増えていることから、ぱっと見なんだか違和感のある形、とでも言いましょうか。
純粋なラウンドフェイスではないというのもラグスポにおいては重要なデザイン要素です。
ー想起されるコレクションー
・パテック フィリップ ノーチラス
・オーデマ ピゲ ロイヤルオーク
・オーデマ ピゲ CODE11.59
・ジラール・ぺルゴ ロレアート
・ゼニス デファイ スカイライン
薄さ
カジュアルにもオンスタイルにも両方マッチする腕時計ーラグスポのベネフィットとしてよく謡われる利点ですが、それもこの薄さが大きな好影響を与えます。
もしこの薄さを実現できなければ、オフシーンでは良いとしても、ビジネスシーンにおいてスーツスタイルの袖口に引っかかってしまうような厚みがあるとこの利点はかき消されてしまいます。
ー想起されるコレクションー

しなやかなブレスレット
ブレスレット(ジュエリー感覚で着用できるような)がしなやかであるというのもラグスポを語るうえで充分余地のある要素でしょう。
ブレスレット自体が手首にしなやかにフィットするというのも重要ですが、ケースからブレスレットへの切り替えが流れるような美しい流線を描くという点も見逃せません(ロレックスのデイトジャストはドレスウォッチに区分されがちですが、どこかラグスポ感を与えるのはコンシールドタイプのバックルの存在も影響しているのではないかと思わざるを得ません)。
ー想起されるコレクションー
・ヴァシュロン コンスタンタン オーヴァーシーズ
・チューダー ロイヤル
・タグ・ホイヤー リンク
都会的である
これは賛否がわかれそうな要素ではありますが、個人的な意見としてオリジナリティーが高いと思っており、かつ好みであるという点も相まってかなり推したい要素です。
「都会的」という表現自体が曖昧ですが、具体例の一つとして長い時計の歴史においては異素材的存在の代名詞でもあるラバーを使用したモデルなどがこれにあたると考えます。さらに言うならば、単純なラバーではなく、革新的な進化を遂げた新しいラバーであるといったことです。
ー想起されるコレクションー
・パテック フィリップ アクアノート(トロピカルバンド)
・ロレックス ヨットマスター(オイスターフレックスブレスレット)
・オーデマ ピゲ CODE11.59
ジェンダーレスである
これはさらに賛否がわかれそうな要素ではありますが、先述した「都会的である」の延長とでも言いましょうか、より現代の時代に即した、というニュアンスで(齟齬はありそうですが)より重視される要素ではないかと。
貴金属を使用しているラグスポが増えてきたことを述べましたが、そのなかにはフェミニンさを感じるユニセックスの腕時計もよく散見されます。
時代の流れを踏まえると、この要素をより色濃くした(というかむしろ着用者の性別という観点ではより曖昧な)モデルは増えてくると思います。
ー想起されるコレクションー
・ピアジェ ポロ(ダイヤインデックス、ユニセックスモデル)
ラグスポ界隈はこれからどうなる?
ここまで曖昧なラグスポの定義をなるべく分解し、それぞれの要素について考察してきました。ここからは、それらを踏まえて、腕時計界におけるラグスポというジャンルがどう変化していくのか、超個人的な予想を交えて考えていきたいと思います。
ただ、先述したラグスポ要素における2つの要素である「ラグジュアリー」と「スポーティー」という要素においては、正直もうお腹がいっぱい多くのメーカーが試行錯誤を試みており、多数のモデルが輩出されていることから、それぞれの要素を色濃くしたり、バリエーションを変えてみる、くらいしか私の頭では思い浮かばないので割愛します。
これからまだまだ模索の余地があると考える第3の要素の中でも「現代的である」、「ジェンダーレスである」という観点に絞って、ラグスポの今後を予想してみたいと思います。
都会的である
引き続きパテックフィリップ(アクアノート)*やオーデマ ピゲ(CODE11.59)**あたりが担ってくれるでしょう。ロレックスのヨットマスターやスカイドゥエラーもこれまでのラインアップを拡充する形で裾野を拡げてくれるかもしれません。
もしかすると高級時計メーカーのなかでも先んじてスマートウォッチをリリースしたタグ・ホイヤーも可能性としてあるかもしれません。
あとは先鋭的なブルガリ、ウブロあたりにも要注目だと思います。先進的な技術と機械式時計を融合させたタイプや、SDGsに配慮したコレクションの登場が目立ってくるのではないかと推測します。
*参照:トロピカルでアーバン?二面性を併せ持つパテックのラグスポ、アクアノート
**参照:オーデマ ピゲの新生ラグスポ CODE.11.59 バイ オーデマ ピゲ
ジェンダーレスである
ジェンダーレス要素を強めつつ、この市場に参入してきそうなのはハイセンスなカルティエ、シャネルあたりかなと考えます。それぞれタンクフランセーズおよびパンテール、ボーイフレンドが少しずつスタイルを変えてラグスポ的な解釈を加えたりするとすごく魅力的だなと。
モーリス・ラクロアのアイコンなどは、カラフルでビビッドなタイドシリーズをリリースするなど、一部すでにこういった要素を取り入れコレクションに反映しているように見えます。
全く新しい要素を取り入れラグスポに昇華させる
今回挙げたどの要素のベクトルでも無く、かつてオーデマ ピゲのロイヤルオークが誕生した時のように、全く新しい方向性でラグスポポジションを確立するコレクションのリリースも十分考えられます(ただし市場がそれに気付いて人気に拍車が掛かるまでは数年掛かりそうな予感)。
0→1をやってのけそうなのはやはりロレックス。セイコー*、そしてルイ・ヴィトン、エルメスあたりもあるのでは、と思っています。
*参照:セイコーにラグスポなんて無い?いろいろ考えた結果、衝撃的な結論に至った。
まとめ
いかがでしたか?今回はラグスポの定義を振り返り、その要素を分解したうえで直近のトレンド、およびラグスポのこれからについて考察してみました。
改めて考えてみると非常に奥が深く、これからも新しい要素を組み込みながらますます発展しそうなラグスポ界隈、これからも各社の動きに要注目です!