日本が世界に誇る最高峰メーカー、セイコー。高級時計の世界にまだ足を踏み入れたばかりの方でもその名前だけはきっと知っていることでしょう。
モノづくりの国、日本における誇り高き存在のセイコーですが、昨今爆発的人気を誇るラグジュアリースポーツウォッチ、通称ラグスポなるラインアップは存在するのでしょうか?
ラグスポの定義が曖昧な上に、モノは言いようで、これがラグスポだ!と言ってしまえばなんとなくラグスポっぽく見えてくる、「だけどセイコーとラグスポって正直あんまり結びつかない・・・」という方もきっと(筆者も含めて)多いのではないかと思います。
そこで今回は、実際セイコーウォッチにラグスポなるものは存在するのかどうか、ということを考察してみたいと思います!
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セイコーウォッチにラグスポは存在する?
早速ですが、セイコーの展開するラインナップにラグスポなるジャンルに該当しそうな腕時計はあるのかどうか、考えていきます。
ラグジュアリーとスポーティーという要素から考える
まずは、ラグスポウォッチにおける主要且つ一般的な要素である、「ラグジュアリー」と「スポーティー」という観点から考えてみたいと思います。
※なお、本記事で使用するラグスポの要素とは「ラグスポの定義とは?ラグスポ要素を大分解してみた!」で考察した要素を参照しています。
ラグジュアリー
ラグスポを語る文脈のうえで、ラグジュアリーの要素にはさらにドリルダウンしていくと下記の観点に分類できるとしました。それぞれの観点からセイコーウォッチをみていきましょう。
・ブランド価値
セイコーというブランドは、特に腕時計ビギナーにおいては国内評価がそこまで高くないように感じます。スイスメイドのロレックスをはじめとした豪華絢爛な派手さがないため、高級時計界隈における目立ち度としてはそれほどではないと思う方も居ることでしょう。しかし、実際にはセイコーは世界でも知名度が高いメーカーです*。
そして忘れてはならないのが、今日では一般的となった駆動方式、クォーツを世界で初めて誕生させたメーカーこそセイコーという事実です。当時はクォーツショックと呼ばれ、多くの機械式高級メーカーが休眠を余儀なくされたほどの衝撃だったといいます**。
ブランド価値を構成するポイントの一つとして類まれなる技術力を表現する機構があるとするならば、クォーツ機構を開発したセイコーのブランド価値は非常に高いレベルであるといえます。
*参照:SEIKOが世界3位にランクイン!世界最大級の高級時計専門マーケットプレイスChrono24が2021年度高級腕時計ランキング速報を発表!
**参照:クォーツショックとは?知っておきたい時計業界の歴史
・使用素材
セイコーのラインアップのなかでは、特にステンレスや貴金属の使用のアピールを強めたモデルは多くない印象を受けます。
実際には高い耐食性と白みのある輝きを持つエバーブリリアントスチールなど先進的な素材を使用していますが、ラグスポの文脈上に乗せるとした場合、イマイチ消費者には伝わっていない感が拭えません。
・価格
ラグジュアリーの要素を語るうえで、文字面の半面、もはやあまり価格の高低は影響度合いが小さいと過去記事で述べたばかりですが、一応考察しておきましょう。
セイコーのラインアップの価格帯において、パテック フィリップやロレックスといったブランドに迫るような超高額帯のラインナップはほとんど存在しません。
それどころか安かろう、悪かろうという定説を根本から覆すようなコスパを誇るのがセイコーウォッチ。しかし、こちらも使用素材と同じく、ラグスポという文脈で意図的にプライシングを行っているようには感じられないように思います。過去には億レベルのクレドール*が現れたこともありましたが、逆に桁違いすぎて例外でしょう笑。
*参照:国内最高級時計のクレドール!買取相場と買取のコツをご紹介
スポーティー
ラグジュアリー要素と同様に下記のように観点を分解してセイコーウォッチのラグスポについて考えてみます。こちらはそれぞれの色味が強ければ強いほど良い、というわけではなく、あくまでもラグ”スポ”と表現するに足りうるほどのマイルドなスポーティーさがあるかどうかが重要です。
・パイロット
セイコーの展開するコンセプトにパイロット的要素が少ない気がするのは気のせいでしょうか?(強いて言うならスピードタイマー?)
後述のダイバーズ関連のラインアップは非常に豊富ですが、空という領域においては意図的にターゲティングから外しているのかもしれません。
・ダイバーズ
翻ってダイバーズウォッチはどうでしょうか?
セイコーダイバーズウォッチの歴史は50年以上もの長い歳月を経て現在もなおプロフェッショナルに愛されるポジションを維持しています。深海での耐圧性能など、数々の輝かしい記録を打ち立ててきたセイコーウォッチは、真のダイバーズウォッチとして銘打っているほどです*。
したがって、このダイバーズという要素においては、非常にスポーティー度合いは高いと言っていいでしょう。
このように考えてみると、現在のところブランド価値は非常に高く、ダイバーズ的な要素を含むラインアップを展開しているとはいえ、どちらかというとダイバーズのプロフェッショナル感が非常に強く、この2大要素だけではラグスポらしいラグスポが存在するとは言いにくいでしょう。
*参照:スペシャルコンテンツ セイコーダイバーズウオッチの歩み
第3の要素から考える
ここからはラグジュアリーやスポーティーといった「ラグジュアリースポーツ」そのものの名称から想起される要素以外の第3の要素(と勝手に筆者が呼んでいる)の観点からセイコーウォッチのラグスポ具合を考察してみましょう。
前半の要素だけから考察すると一見セイコーにはラグスポウォッチなるものは無いように感じていた筆者ですが、第3の要素から考察し始める頃から、一見無いように見えて実は既に存在しているのでは?と思い始めました。
都会的である
第3の要素は、前述の要素には含まれない要素、すなわち
・ビス留めデザイン
・多角形フォルム
・薄さ
・しなやかなブレスレット
・都会的である
・ジェンダーレスである
を挙げていました*。しかし、このなかでも上から4つの要素においては、これだ!という際立ちを見せる特異なモデルがセイコーウォッチにあるとは正直言い難いと思います。加えて最後の「ジェンダーレスである」という要素においても特に引っかかることはありません(むしろちょっと苦手?)。
しかし、「都会的である」という点に着目してみると少し引っかかります。
「都会的である」を「より現代的である」と解釈でするとセイコーにおいて思い当たる節があります。それはセイコーが開発した世界初の駆動機構、スプリングドライブ*です。
機能という点で、技術力の裏付けとなるという意味では前述の「ブランド価値」とオーバーラップしますが、この機構が機械式、クォーツに続く最も新しい駆動方式であるという観点から、敢えて「現代的である」という側面から解釈するのであれば、セイコーはラグスポ的要素を持っているといえます。
しかも、ムーブメントの駆動方式という点がミソです。たとえば、同じ階層(「都会的である(より現代的である)」)におけるロレックスのオイスターフレックスブレスレットやパテック フィリップのアクアノートに装備されているトロピカルバンドはいずれもブレスレットに着目したものです。しかし、腕時計の付属物としてのブレスレットではなく、セイコーが開発したのは腕時計の心臓部分ともいえるムーブメントなわけです。この革新度、与える影響の大きさ、そしてそこを狙い打ちしたセイコーの執念と視座の高さは高級スイスブランドをも凌ぐものだと思います。
*参照:スプリングドライブ その仕組みとは?グランドセイコーの独自開発機構を解説!
第4の要素から考える
これはラグスポの定義とは?ラグスポ要素を大分解してみた!」の末尾でも述べた通り、上記の要素とは全く異なる観点から生じるものです。私自身も言語化できていない要素でありり、0→1を誕生させうる”何か”となりうる要素だと考えます。
そして、セイコーにはそのポテンシャルが非常に高い確度で備わっているのではないかと思います。それはこれまでの実績(クォーツやスプリングドライブ*といった革新的な機構且つそれらがすべての腕時計に搭載されるものであるという影響度合いの大きさ)を踏まえると否定しにくいものかと。
オーデマ ピゲのロイヤルオークが誕生した当初のように、これまでの常識を覆す全く新しい要素を備えて姿を現す、そんなことをセイコーならばやってのけるだろうと思います。
そして、実はそれはもう誕生しているのでは?とも思っています。それはセイコーの最上位コレクションの存在、グランドセイコーです。
なぜグランドセイコーが全く新しいラグスポとしてのポジションになりうる可能性があるかというと、もちろんこれまで述べたいくつかの要素は多かれ少なかれ持っていることもありますが、ここで伝えたいのはそういったことではありません。
ラグジュアリースポーツウォッチを着用することによるベネフィットについて思い返してみると、多くのメディアで謡われているように、それは「オンスタイルでもオフスタイルでもどちらにも絶妙にマッチする」ということです**。
機能が本格的だとか、高級そう見えるとか、そういったことの先にある着用者にとっての最大のメリットがここにあるのではないでしょうか。
そして、ここでグランドセイコーのコンセプトを見てみましょう。
そう、それは「究極の普通」です。
これこそまさに、日常使いができながらも、究極的に極められた贅沢を味わうことができる、もはやオンオフ両シーンで使えるといった表現がチープに感じられるほどにこだわりぬかれた哲学の体現ではないでしょうか。
ということで、実はセイコーにはすでにラグジュアリースポーツウォッチは存在していた、そしてそれはラグジュアリースポーツというコンセプトを新しく塗り替えてしまうほどの高次元で抽象度の高い視座から捉えられた、全く新しいかたちのラグスポである、というところで結論としたいと思います。
**参照:装いに「オン/オフ」の垣根がない今、ラグスポこそ使える時計である
まとめ
いかがでしたか?今回はセイコーのラグスポについて考察してみました。正直なところ、そこまで愛着があったり、詳しいことを知っているブランドではなかったのですが、記事を書くにあたりセイコーのことを調べたり考えているうちにすっかりとファンになってしまいました笑。
以前に働いていた腕時計専門店でも、腕時計愛好歴が長かったり、ハンパないこだわりや情熱を持っている先輩方はこぞってセイコーを着用して(推して)いたのをふと思い出しました笑。今後も同社の動向が楽しみです!
※まだ書き足りないこともあるので、随時加筆予定です。